「そう。紫苑と柊依は今から恋人として振る舞うの。それで先に照れた方が負け。負けた方が3人分のジュースを奢るってわけ。どう? シンプルでしょ?」
つらつらと菫がルールを並べていくけれど、私はちっともついていけない。
「な、なにそれ。菫は?」
「私はこのゲームの発起人だからゲームには参加しないわ」
「ちょっと待ってよ、急にそんなこと……」
菫が突然こんなことを言い出したのは私と柊依の仲を縮めるためだと、すぐに察した。
間に入るとの言葉どおり、私と柊依が近づくきっかけを作ろうとしてくれているのだろう。
でもこれはあまりに荒治療すぎて、私には無理だ。
ゲームの中とはいえ柊依と恋人の距離感になるなんて、絶対心臓がもたないに決まっている。
けれど頭上から降ってきた声が、私の躊躇いの声をかき消した。
「いいよ、そのゲームのった」
その声の主はもちろん柊依だ。
「え?」
「紫苑は勝つ自信ねぇの? 俺は負ける気しないけど」
私の顔を覗き込むようにして不敵に笑んだ柊依が、私のプライドを刺激してくる。
そんなふうに挑発されておきながら、尻尾を巻いて逃げるわけがなかった。
「や、やってやろうじゃない」
気づけば、口をついてそんな言葉がこぼれていた。
すると私と柊依のやりとりを見守っていた菫が、満足そうな笑みを浮かべる。
「そうこなくちゃ。私はカフェでさっき買った本を読んでるわね。さ、ゲームスタート♪」

