【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


「実はこの前、ある新刊が発売されたの。発売されてすぐ話題になって、私も買いにこの本屋まで来たけれど、1か月先まで入荷はないって言われたわ」


菫の話を聞きながら、菫がこれから提示するであろう“未来”を察する。


菫は幼い頃から読書家だった。

活字嫌いな私とは正反対の、いわゆる本の虫だ。

菫の部屋にはライトノベルからひどく難しそうなものまで数えきれないほどの本が、天井に着きそうなほど高い本棚に並べられている。

そんな菫のことだ、きっと彼女の叶えたい未来は本に関することに違いない。


「だから、その本をこの本屋に今すぐ入荷させてちょうだい」


思ったとおりの未来を、菫は口にした。


すると柊依はにっこりと得意げに笑う。


「お安い御用だ。ほんと、菫は本が好きだな」

「柊依には敵わないけどね」


菫が肩をすくめる。

私は驚いて柊依を見た。


「柊依も本が好きなの?」

「ええ。すごいわよ、柊依の読書熱は」

「そういや俺と菫が仲良くなったのも、菫が読んでた本の話題で盛り上がったのがきっかけだったよな」

「へぇ……」


柊依がまさか読書家だったなんて。

チャラそうで本とは無縁に見えるのに、外見で人はわからないものだ。

そういえば柊依の家に行った時、大きな本棚を見かけたけれど、それがまさか柊依のものだとは思わなかった。


柊依のことをまたひとつ知ることができて、心が豊かになった気がする。