【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


すると柊依はあぐらをかいていた左膝を立て、そこに腕を乗せる。

私を見つめる瞳には、優しさという温度が内包されていることを実感せずにはいられない。


「紫苑はハリネズミみたいだと思ってたよ。針を出して、必死に内面に触れられないよう威勢張って。でも針に覆われた内側の紫苑は、繊細で気にしいで、笑顔が眩しいんだよな」

「私の笑顔が?」

「眩しいよ。だから俺は、その笑顔を曇らせるすべてから守りたいと思った」


柊依の言うことひとつひとつが胸の中にしまいきれないほど大きくて、取りこぼしてしまいそうになる。


笑顔が眩しい、は私が柊依に対して抱いていた感情だ。

まさかそれが私への言葉として向けられるとは思ってもみなかった。


それと同時に、照れくささが込み上げてくる。

かーっと顔が熱くなるのが、鏡を見ずともわかる。

爆弾を投下されたようで、返す言葉も見つからない。


するとそんな私を見つめて、柊依がふっと破顔する。


「うん、照れ屋なところもあるよな。それも可愛い」

「そういうこと言うのやめて」


つい私は、可愛くない受け答えであしらってしまう。

だって柊依の言葉を真正面からまともに受け止めたら、心臓がもたない。

柊依は優しいから、だれにでもこんなことが言えるのだ、きっと。