【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように





柊依が持ってきてくれた上下のスウェットに着替え、髪をタオルで拭き、私は洗面所を出てリビングへ向かう。


それにしても、前来た時も思ったけれど、柊依の家は無駄なものがない。

小学生の妹さんがいるにしては、おもちゃなどの類もなく片付いている。

お母さんがよっぽどの綺麗好きな人なのだろうか。


白を基調とした物のない空間は、余計に広さが強調されているようだ。

しんと静まり返った、無音という音が耳を刺激してくる。


白く大きな空間の中、柊依はソファーに座って膝の上に視線を落としていた。

髪はまだ湿らせながらも、濡れた制服は部屋着に着替えている。


一歩近づきそこで、柊依が見ているのが水色のノート――未来日記だということに気づく。

未来日記に向ける暗く神妙な表情に、ざわっと心に影が差す。

柊依のそんな顔を見たことがなかった。


暗いその感情を断ち切るように、私は声をあげる。


「柊依、ありがと。着替え貸してくれて」


リビングの入り口から声をかけると、柊依が未来日記から視線を上げた。

そしてさっと未来日記を閉じた。


「ああ、よかった。サイズは問題なさそうだな。乾くまでそれ着てて」