彼はこちらを振り返りもせずぐんぐん進み、お兄さんから離れたところで立ち止まった。
そして勢いよくこちらを振り返る。
「キャッチだから、あれ。ったく危ないな」
鋭い忠告だった。
続けて、彼の瞳がまっすぐに追及してくる。
「っていうか、菫じゃないよね」
……やっぱり。
彼に菫だと偽ることはできないと、一目見た時からわかっていた。
市村柊依。
それが彼の名だ。
華やかで端正な顔立ちは、女子ウケがいい要素しかない。
柔らかそうな髪の裾からは、きらりとピアスが光っている。
細身で身長が高く、スタイルまで抜群なのだから、見るたび常に女子に囲まれている。
チャラチャラへらへらとした軽い振る舞いで、世渡り上手。
私が一番嫌いな人種だ。
そして――菫と仲がいい。

