【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


すると柊依は、私の頭に添えているのと逆の空いていた左手を背中へと回した。

そしてぎゅうっと抱きすくめる。


いっそう騒がしくなる自分の鼓動の音に、柊依の声が重なった。


「ちっさい体。そんなぴしっと背筋伸ばしてばっかりいるなよ。なんでも溜め込もうとすんな」

「柊依……」

「逃げることも間違えることも弱音吐くことも、なんにも悪いことじゃねぇよ」


もうだめだ。

柊依が私の心の一番柔いところに触れてくるから。

だから私は涙が止まらなくなってしまうのだ。


時に逃げることも間違えることも弱音を吐くこともあるかもしれない。

それでも。


「私はやっぱり、私が好きな自分でありたい……」


小さい頃の自分に、これが今の私だよって胸が張れるように。


「へへ、偽善者って言われるかもしれないけど」


涙を流しながら苦笑する。

けれど柊依は私のことを嗤ったりしない。

いつだってまっすぐに私の気持ちを受け止めてくれる。


「偽善者だろうがなんだろうが、見てるだけでなにもしない奴らより、人に優しくできる紫苑の方が何百倍もかっこいいよ」

「うん……」


強がって平気でいるふりをしていたけれど、本当はずっと誰かに、嘘偽りない"自分"を知って受け入れてほしかった。

自分でも境目がわからなくなるくらい必死に押し殺し隠していたのに、柊依はすべてを見透かしてしまった。


教室の窓から差し込む光が、私たちを暖かく包み込む。

柊依と出会ってから世界が明るく優しく見えるのは気のせいだろうか。


前を向いて進んでみるよ。

進んだ先に光があると、そう信じて。