仁香が教室を出て行ってしまうと、教室にしんとした静けさが降りてきた。
「……やっと気づけたよ、大切なことに」
肩から一気に力が抜けていくのと同時に、ぽつりと声がこぼれた。
私は背後にいる柊依を振り返る。
ずっとそこで見守り、背中を押してくれた柊依を。
「遅すぎたかもしれないけど」
自嘲から苦笑が漏れる。
だって、こんな簡単なことにも気づけずに、遠回りばかりしていた自分が恥ずかしくて。
すると柊依は私の頭の後ろに手を添えたかと思うと、ぐいっと自分の胸元へと引き寄せた。
「そんなことねぇよ。頑張ったな」
甘い匂いが私を包み込む。
その香りが鼻をついた瞬間、情けないことに涙の波がぐっと鼻の奥へと込み上げてきた。

