【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


「紫苑ちゃんはずっと私のヒーローで憧れだった。強くて正しくて自分を持ってる紫苑ちゃんのことが。だから私はあの時、勝手だけど裏切られた気持ちになっちゃったの。私をいじめていた中井さんたちと、紫苑ちゃんも同じなんだって」


仁香の言葉にはっとする。


――小さい頃はずっと、自分の“正しい”を信じていた。


でも自分がいじめの被害に遭って、それは違うのだと気づいてしまった。

自分が信じた“正しい”を突き通すよりも、まわりに合わせることの方が大切だと。

だってまわりと違うことをすることこそが、糾弾される悪だったから。


時に“正しい”を折り曲げそこから目を逸らし、はみ出したり波風立たないようにしたりするのが、私が見つけた生きていく術だった。

そうすればだれからも嫌われないし、“いいこ”の私はみんなに認めてもらえると、そう思っていた。


昔から菫と比べられがちだったから、自分に向けられる人の目には殊更敏感だったのかもしれない。

一番大事なのはまわりにどう思われるか、どうしたら私の存在を認めてもらえるか、それだけになっていた。


今の私があの時の同じ状況に置かれたら、私は仁香を助けられただろうか。

きっと、無理だ。

今の私にはそんな勇気なんてない。


そんな私だから、嫌われないように夢奈と夏鈴に合わせて悪口を言って、ふたりを傷つけてしまった。


……ああ、そうだったんだ。

私は小さな頃持っていたはずの大切なものを手放してしまっていたんだ。