【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


心臓がざわっと揺れて、そちらへ振り向けば、後方のドアのところに髪をひとつに結んだ女の子が立っていた。

――仁香だ。


記憶の中の仁香はショートカットであどけない印象だったけれど、いつの間にか髪も伸びて、ぐんと大人っぽくなっている。


「仁香……。久しぶり。元気そうでよかった」


喉の奥から掠れた声を振り絞る。

ちゃんと声になったことにほっとする。


「びっくりした……。久しぶりにおじいちゃん家に来てたんだけど、なんとなく急に中学校に来たくなって。でもまさか紫苑ちゃんに会えるなんて思わなかった」


仁香はぎこちない空気を振り払うように、記憶のものよりもっと明るいトーンで話す。

時に身振り手振りをつけながら。


距離感を探り合う会話の中に、お互いに共通のわだかまりがあるのを痛感せずにはいられない。


「紫苑ちゃんも元気そうだね」

「うん、元気」


私はちゃんと話せているだろうか。