【完】桜の降る日、君の隣で死ねますように


「何度席替えしても、この席ばっかり引いちゃってた」

「悪運だな」


教卓に肘をついた柊依が笑う。


見慣れた景色に柊依がいるというのが、なんとなく不思議な心地だ。


柊依と同じ中学校で同じクラスだったら、私たちの関係はどんなふうに今と違ったのだろう。


人気者な柊依のことだ。

きっとどんなクラスでも、その中心にいて、まわりの子を巻き込むようにして照らしているのだろう。


私はその光が眩しくて、きっと近づくことができなかったはずだ。

だってずっと柊依は住む世界が違うと、敬遠していたのだから。


だから私たちにとっては、あの夜の強引で少し不思議な出会い方が正解だったのかもしれない。


その一方で、でも、とも思う。

もっと早く出会っていたかったと。

そうしたら柊依の笑顔と思い出を、私はもっとたくさん手に入れることができた。

見逃していた一瞬一瞬が、ひどく惜しく思えてくる。


「柊依と中学生の時に出会いたかったな」


机を撫でながら、ぽつりと声を落とすと。


「……そうだな」


しんとした空気の中、柊依の声が響いた。


短いその言葉の中になんらかの含みを感じて、顔を上げたその時だった。


「――紫苑ちゃん?」


重なるようにして、教室の後方から声が聞こえてきた。