校長先生にお礼を告げて校舎に入ると、懐かしい木の匂いが私たちを迎えた。
嗅覚はより鮮明な中学時代の思い出を連れてくる。
来客用のスリッパに履き替え、廊下を進む。
1年生の教室は1階にある。
「ここが1年生の時の教室」
クラスはそう、1組だった。
教室の中には無人の机が30個ほど並んでいる。
黒板の上には学級目標が飾られ、教室の奥の壁には生徒たちの書道が並んで貼られている。
大なり小なり変化はあれど、間違いなく私が通っていた場所だ。
「へー、ここが。で、紫苑はどの席だった?」
「私はたしか、教卓の真ん前だったなぁ」
教卓の真ん前に置かれた席を指先で撫でる。
今はどんな子がこの席に座っているのだろう。
先生の真ん前だなんてかわいそうに。

