「たくや、ちょっといい?」



ふたりきりしかいない教室で俺はしょうに突然声をかけられた。


静まり返った教室の中で俺の鼓動の音が響き渡っているような気がして、なんだか恥ずかしくなり唾を飲み込む。



「どうしたの?」


「たくや、オレさ・・・・・・」



丁寧に呼ばれた自分の名前に、心臓が高鳴った。


こういった緊張感のある雰囲気が、俺は苦手だ。



「オレ、たくやのこと好きなんだ。ずっとそばにいると、どんどん好きになっていって。この気持ちをひとりで抱えてるのが苦しくなってきた」



チームメイト、同級生、クラスメイト。


そして何より、俺たちは男と、男。


わかってはいた。頭ではおかしいって思っていたし、こんなのダメだってわかってもいた。


俺は今まで何度も感じていた違和感を否定し続けて、気が付かないふりをしてきていた。


だけど、今まで心の片隅に押しやっていた大切な気持ちが、自分だけのものじゃなかったんだっていうことが嬉しくて。


許された気がして、認められた気がして、気がついたら頬に一筋の涙が流れていた。



「俺もしょうのことがずっと好きだった。好きだったけど、そんなの俺の勝手な気持ちだって思ってたから、誰にも言えずにいた。だから・・・・・・。伝えてくれてありがとう」



衝動的なのかもしれない、気がついた時には俺たちは唇を触れ合っていた。


今までひとりで闘ってきていた気持ちがゆっくりと消えていって、あたたかな温もりに包まれていく感覚を生まれてはじめて経験した。