翌日、俺はユニフォームに着替えているしょうの隣に並んだ。



「たくやも早く着替えろよ。練習始まるぞ」


「あのさ、話がある」


「どうしてそんな深刻な顔してんだよ? たくやらしくないぞ」


俺はフーッと深く息を吐き切ってから、まっすぐに見つめてくるしょうの目をしっかりと見た。



「俺さ、怪我したんだよね。もうテニスできないって先生に言われた。今までふたりで一緒に頑張ってきたのに、本当にしょうに申し訳なくて」



しょうが一瞬言葉を詰まらせたのがわかり、俺は足元に視線を落とした。


あまりにも自分のことが情けなさすぎて、これ以上まっすぐ顔を見て会話を続けられないって思った。



「じゃあさ、たくやマネージャーしてよ。テニスできないとしても、俺はたくやとこれからも一緒に戦っていきたい。テニスのことが嫌になったわけじゃないんだろ? な? 俺はたくやと頑張りたいんだ」



そう言うしょうの言葉にはなんの躊躇いも、迷いも、一切なくて。


俺はきみに呆れられると思っていた、嫌われると思っていた、見捨てられると思っていた。


だけど、そんなことは全くなくてこんな俺のことを受け入れ、これからも一緒に戦っていきたいと言ってくれて。



「だからたくやもテニス部やめるなよ。あ、練習始まるから俺そろそろ行くわ」



そう言い残すと、チームメイトが準備運動をしている輪の中へと走り去っていった。


この時からだろうか。


きみへの想いが今まで以上に強くなったのは。


今、きみが俺の味方でいてくれたように、俺もどんな時でも裏切らないで、そばにいたいって思ったのは。


これからもずっと離れたくないって思ったのは。


だけど、わからなかった。


この気持ちがきみへの友情的な感情なのか、もしくは恋愛感情なのか、ということが。


俺は首を振って、自分の頬を2回叩いた。


男の俺が、男のきみに恋愛感情なんかを抱いてしまうだなんて、きっとあってはならないことなのだと思う。


大きく揺れ動く気持ちの中で心のバランスを保つのは難しくて、必死できみへの想いを否定し続けた。