思い出すのは、高校1年生の秋のこと。
わが校のテニス部は毎年県大会で優勝するほどの強豪校で、土日も朝から夕方までみっちりと練習が行われていた。
もちろん朝練も欠かさずあって、もともと夜型人間だった俺にとっては少ししんどいものがあった。
そして試合前になると練習はさらにハードになっていって、部員の中をピリピリとした緊張感が張り詰めていた。
その中で優勝候補として期待されているペアが1組。
名前はたくやとしょう。
僕たちふたりは中学校も同じで、その頃からペアを組んで試合を勝ち進んでいた。
中学卒業後も、高校はテニスのスポーツ推薦で入学して、入学後も当たり前のようにふたりはテニス部に所属し、ペアを組んだ。
今まで何人か別の人とペアを組んだこともあったけれど、しょうとは言葉にせずとも息がぴったりと合い、一緒に試合をしていて1番楽しいと思えた。
友情とか、仲間とか、チームメイトとか。
そういったもの以上の親近感というか、自分に近い何かを感じていた。
「俺、たくやとペアでよかったよ。お前じゃなきゃ、俺は無理だったと思う」
試合直前の放課後のことだった。
俺としょうが部室でボール拭きをしているときに、きみは突然手を止めて話しかけてきた。
「どうしたんだよ、急に。なに改まっているんだよ」
「いや、俺さ、たくやと一緒に頑張れるってことが嬉しいんだよね。お前とだから頑張ろうって思える」
しょうの耳たぶが赤くなっているのが目に留まった瞬間、俺はその言葉の意味を嬉しいと思うよりも、なぜか恥ずかしいと思ってしまった。
照れくさそうに話している姿を見ていると、俺も照れくさくなってしまいボールを持つ手の脈がうるさく波打ち続けた。
だから俺は誤魔化すようにボールを必死になって磨き続けて、今の言葉を意識しないようにした。
あの時の俺は、しょうに対してどきどきした特別な感情を抱いていてしまっていた。
だけど、それと同時にそんな自分が少し怖くもなった。
だってしょうが嬉しいと言っているのは、テニスのペアとして一緒に頑張れることが嬉しいということ。
別に俺とふたりでいることを喜んでいるわけではない。
そんな俺の中になんとも言えない葛藤や複雑な気持ちといった、もやもやした気持ちが芽生えてしまったことに、自分自身どう対応していいのかわからなかった。
わが校のテニス部は毎年県大会で優勝するほどの強豪校で、土日も朝から夕方までみっちりと練習が行われていた。
もちろん朝練も欠かさずあって、もともと夜型人間だった俺にとっては少ししんどいものがあった。
そして試合前になると練習はさらにハードになっていって、部員の中をピリピリとした緊張感が張り詰めていた。
その中で優勝候補として期待されているペアが1組。
名前はたくやとしょう。
僕たちふたりは中学校も同じで、その頃からペアを組んで試合を勝ち進んでいた。
中学卒業後も、高校はテニスのスポーツ推薦で入学して、入学後も当たり前のようにふたりはテニス部に所属し、ペアを組んだ。
今まで何人か別の人とペアを組んだこともあったけれど、しょうとは言葉にせずとも息がぴったりと合い、一緒に試合をしていて1番楽しいと思えた。
友情とか、仲間とか、チームメイトとか。
そういったもの以上の親近感というか、自分に近い何かを感じていた。
「俺、たくやとペアでよかったよ。お前じゃなきゃ、俺は無理だったと思う」
試合直前の放課後のことだった。
俺としょうが部室でボール拭きをしているときに、きみは突然手を止めて話しかけてきた。
「どうしたんだよ、急に。なに改まっているんだよ」
「いや、俺さ、たくやと一緒に頑張れるってことが嬉しいんだよね。お前とだから頑張ろうって思える」
しょうの耳たぶが赤くなっているのが目に留まった瞬間、俺はその言葉の意味を嬉しいと思うよりも、なぜか恥ずかしいと思ってしまった。
照れくさそうに話している姿を見ていると、俺も照れくさくなってしまいボールを持つ手の脈がうるさく波打ち続けた。
だから俺は誤魔化すようにボールを必死になって磨き続けて、今の言葉を意識しないようにした。
あの時の俺は、しょうに対してどきどきした特別な感情を抱いていてしまっていた。
だけど、それと同時にそんな自分が少し怖くもなった。
だってしょうが嬉しいと言っているのは、テニスのペアとして一緒に頑張れることが嬉しいということ。
別に俺とふたりでいることを喜んでいるわけではない。
そんな俺の中になんとも言えない葛藤や複雑な気持ちといった、もやもやした気持ちが芽生えてしまったことに、自分自身どう対応していいのかわからなかった。