俺はその音とともにイライラが増してきて、画面越しから聞こえる兄貴の声に睨みつけた。
「これでも父さん、心配してるんだぞ。なんかあったら連絡しろよ」
 兄貴の声は本当に心配そうにしていた。
 その声に俺は心配というより憐れんでいる気がした。
「……俺らを置いて出て行った以降連絡なかったのに…今更本当になんだよ。金だけ渡して。金さえ渡せば、いいと思ってたんだろう!? 俺が兄貴の学校に行かなければ何もしなかったのかよ!」
 俺は腹が立ってしょうがなかった。兄貴はこの二年間、何をしていたのだろうか。
 俺たちのことは一回も考えたことなかったのか。生活費だけ、渡すだけで。なにも……
 お金だって、生活費だけじゃ足りないから母さんの通帳でまかなっていた。
 家族だったはずなのに、頭の隅にもいないなんて。俺は一方的に電話を切った。
 携帯の画面はホーム画面に戻り、俺は携帯を下におろして、ため息をついた。
「…どうしたの? 何かあった?」
 母さんは俺がいきなり怒鳴り声を出したので、驚きながらも俺の傍まで来ていた。
「いや、何もないよ。行こう」
 俺は母さんの手を取り、歩き始めた。母さんは嬉しそうにしながら前を向いて歩いていた。
 本当に楽しそうにして。その後は、家に帰った。
 次の日、母さんは早く起きてボッーとして、テレビを眺めていた。
「おはよう。どうしたの?」
 俺はあくびをしながら、テレビを見ている母さんに話しかける。
 母さんはテレビを見つめたまま黙っていた。
「……………」
 首を傾げながら俺は台所に立って、冷蔵庫に何が入っているか確認した。
 キャベツのかけら・卵しか入っていなく、昨日冷凍庫に入れた残りのご飯があった。
 昨日は買い物もしていないし、何もないのは当然だ。