君の雨が溶ける

 数学の先生が教科書などを片手に持って、クラスの中に入ってきて授業が始まった。
 授業は始まり、私は授業を終えてから放課後に工藤の家に行った。
 工藤の家に行くと、そこには誰もいないのか物音もしなかった。
 心配になり、すいませんとインターホンを鳴らしていた。
 鳴らしてもいなかったので、私は工藤の家の前で体育すわりをして待った。
 待つと、誰かに声をかけられた。
「おい、起きろ。今宮。今宮。今宮!」
「うーん」
 私は唸っていた。
「起きろ!」
 誰かの声で目を開いて、周りを見渡した。
 そこには、目の前にいる工藤が心配そうに私を見つめていた。
「……帰ってたの…」
 私は目の前にいた工藤に声を発して、顔を上げた。
「……なにしてんだ」
 工藤はなぜ自分の家にいるのか不思議でならなかったのだろう。
「待ってたの」
 私は立ち上がり、目の前にいる工藤を涙目に見つめてから途切れた声で発した。
「なんで?」
 工藤は目を細めて、私を見て聞いてきた。
「工藤が心配で」
 私は本当のことを伝えた。心配だったんだ、彼が。
 誰も言わずに消えてしまうのかと思ったからだ。
「………だから、待ってたのか」
 工藤は驚いたのか私を見てから、下に向いて口を緩めていた。
「剛。まだ何してるの、まだあの子いるの」
 工藤の母だろうか。家の玄関は少し開いていたので声が聞こえてきた。
 工藤はそれに気づいて、私に言う。
「明日には必ず行くから。帰れ」
 工藤は私の右手を握りしめて切なそうに私を見つめてから離した。
 私は少しずつ一歩進んでから後ろを振り向くと、彼はただ前を見つめてから工藤の母に返事をして戻っていた。 
 まさか今宮が俺の家の前にいるとは思わなかった。
 放課後に来たから、三時間ほど俺の家の前にいたとは……そんなに俺のことが心配で…
「今宮?」
 俺は眠っている人を窺いながら、見る。