「……はい、工藤剛(くどうつよし)です。留年して、またよろしくお願いします」

 工藤は眠そうな目で立ってから声を発して、礼をして椅子に座り、また寝込んだ。

「工藤くん。起きろー。先輩が寝たらダメやろー。工藤くん」

 品川先生は眉をひそめて、工藤を呼んだ。

 工藤は全くもって起きもせず、品川先生は諦めた様子でため息をついた。

「……はぁ、もういいよ、知らないからね。次は、六弥くん」

 品川先生は手で合図をして、次の六弥くんにバトンタッチした。

 六弥くんが話し始めた後、工藤はいつの間にか起きていたのか再度私を見てきた。

「…なに?」

 私はひっそりと隣にいる工藤に聞くと、口パクでべ・つ・にと言っていた。

 なんなのよ、もう。工藤剛。寝てるんだったら、留年するなよ。

 私はそう思いながら、工藤の寝てる姿を見た。

 学校生活が不安で仕方なかったのに、工藤のだるい感じに安心した自分がいた。

 これから過ごす高校生活に期待感と不安を抱きながら、この日は終わった。

 だが……私の学校生活を変える出来事が起きようとしていた。

 ひょんなことに突然……私は悪くないのに。