翌日。もう夏の季節になり、暑さが増してきた。今年の夏は去年より暑くなるとニュースでやっていた。私は何事もなかったのように学校に行った。母の言葉に私は救われた。
 だから、私はあまり考え込まないように自分の教室まで前を向いて、歩いた。
 学校の玄関先まで来ると、ブゥブゥと通知音が鳴った。
 私は立ち止まり、手に持っていた携帯を開くと、それは母さんからのライン通知だった。今日無理しなくていいんだからね。その一言だけだった。
 母さんは私が何に悩んでいたのか分かっていたのかもしれない。
 私は大丈夫とだけ送って、自分の下駄箱にある上履きを手で持ち、床に置いて履き替えた。
 履き替えると、私は教室に向かうために真っ直ぐに歩いていた。
 何も考えずに。ひたすら、前を向いて突き進んだ。私は進むことしか出来なかったからだ。
 ガラッと扉を開けて、自分の机に行き、椅子に座って鞄を右側に置いた。
 隣には工藤はいなかった。昨日のお礼言えてないのに。なんで学校に来てないのだろうか。
 私は工藤の席をジッと見ていると、品川先生がドアを開けて挨拶をしてきた。
「おはようございます。今日は少し涼しいですね」
 品川先生は両手を仰いで、少しでも風がくるようにしていた。
 クラスメイト達は、そうですね~と笑いながら同意をしてから友達とコソコソと話して、先生の方を向いていた。おそらく、先生の悪口でも言ったのだろう。
 出席確認をすると、工藤がいないことが分かったのか、品川先生は声を上げていた。
「工藤君は今日はいないのかな。誰か休む理由知ってる人いる? 六弥くんは?」
 品川先生は六弥くんを指名して聞いた。
 六弥くんは工藤と親しいということはやはり担任でも分かっていたようだ。
 クラスメイトも幼馴染という事実を知っている。
「…分かりません…」
 六弥は首を振っていた。
 品川先生はため息をついて、声を発した。
「分かりました。あとみんないるね。じゃあ、朝礼終わりにします」
 そう品川先生が言うと、ザワザワとクラスメイト達は騒ぎ始めた。
 静かにして下さいと品川先生は冷たい声で発して、クラスメイト一同は静まり返った。
「じゃあ、これで終わります」
 品川先生はいつもより低めな声のトーンで言い放ち、教室から出て行った。