六弥からの電話は初めてだった。幼馴染の六弥とは大体メッセージでやりとりしているが、電話をしてくるということはよほどなにかあったのだ。
　電話に出ると、六弥が慌てる様子で俺に言ってきた。
「どうした」
　俺は六弥に聞いた。
「……見つかった」
　六弥は冷静な口調で俺に言う。
「なにが」
　俺は聞き返した。
「工藤の兄貴」
　六弥は冷静な声で俺に言った。
「え？　兄貴？　どこに？」
「今は落合駅周辺にある中学校の教師してるらしい」
　六弥は電話越しでもザワザワと周囲の声がした。今、どこにいるのだろうか。
「教師？」
　俺は驚いた。優秀な兄貴は何にでもなれた。
　弁護士にも警察官にも。大学は教師になる為に入ったんじゃなかったはずだ。
　経済学部だったから教師を取れる学部じゃない。もしかして、途中から学部を変えて、教師の資格を取れるように兄貴なりに頑張ったのだろうか。六弥から聞いてからそう考えていた。
「去年入社して、国語の教師してるって情報」
　六弥は俺にそう言って、あと…と六弥は言いかけていたが、俺は電源を切って走り出した。
　ここから落合駅までは地下鉄二本乗り継いで、着く。落合は今いる場所よりも田舎だ。
　周囲を見渡せば、畑、畑、畑、川、猫、おばあちゃん1人と自然豊かな所で若い人は学校に通っている人達や高齢者がほとんどだ。
　俺は携帯で駅の時間を調べながら、乗り継いで、落合駅に着くと、そこから15分程歩くと着くらしい。
　グーグルマップによると、あまり会社やスーパーは少なく、表示する画面は白くなっていて文字があまり表示されなかった。目的地周辺に着きましたとナビゲーションは他人事のように言ってから目的地に着くと、ナビゲーションは去っていた。
「ここか」
　俺は校門前を通り抜けて、職員用の入り口から入り、スリップに履き替えて二階にある職員室に向かった。