彼女をおぶってるなんて優しいのね、あらあらと頬に当てているおばあちゃんが小声で言っているつもりだが、汗をかきながらも耳から聞こえてくる。
 俺は恥ずかしくて、しょうがなかった。ただ今宮は眠っているだけであって、この状況だと彼氏と彼女に見えるのか…。俺はただ今宮の家まで届けているだけ。
 そのただが俺にとっては希望以上の望みなように思えた。
 無事、今宮宅まで送り届けた。玄関先まで行き、インターホンを押した。
 ピンポーン。インターホンを押したら、中から声がした。
「俺、いや僕、今宮さんと同級生の工藤です。今宮さんが寝ていたので送ってきました」
 俺は後ろにいる今宮をインターホン越しで見せると、今行きますと言って、すぐ出てきた。
 今宮の母親が出てきた。
「あ、どうも」
 俺は今宮の母親に礼をして、挨拶をした。今宮の母親も俺に礼をして、俺を見てきた。
「ありがとうね」
「いえ、授業終わったらすぐ寝てしまったので起こしたんですけど、起きなくて」
「いいんですよ、この子が起きなかったのが悪いんだから、ありがとうね」
 今宮の母は俺の後ろにいた今宮を渡したが、一人で抱え込むのは大変だと思い、俺は今宮の母に言う。
「俺、手伝いますよ。部屋まで一緒に運びますよ」
「いいの、ありがとう。じゃあ、片方ずつ持ってもらって」
「はい」
 俺は返事をした後、右を持ち、今宮の母は左を持って、左右の足は引きずって二階にある今宮の部屋まで行き、今宮をベットに横にした。
「ふぅ、手がかかる子ね。ほんとに」
 今宮の母は、ベットに横になっている今宮を見下ろして言っていた。
「今宮はいい子です。今日俺がここまで運んだことは今宮には言わないでください。ただこの家に送ってきただけと」
 俺はため息をしている今宮の母を見て、俺の思っていることを口にした。
「なんで?」
 今宮の母は首を傾げて聞いてきた。