それが思い出させれて、私は自己紹介と聞くと、そのことが脳裏に浮かんだ。

 あー、あの風景が蘇って、私は思わず下に俯いた。

「じゃあ、自己紹介していくから、左側の列からいくから。最初は足木さんから」

 品川先生はそう言うと、足木さんから順番に自己紹介をしていた。

 足木さんの自己紹介が終わって、二人目…三人目は、初日に品川先生に質問をしていた活発な男子で自己紹介ではボケたり、突っ込んだりして、爆笑が起こっていた。

 次の人は、少し馬鹿げた口調で紹介して、オヤジギャグをかましていた。

 そして、私の出番がやってきた。
 
 こんな目立つ二人を前にして、私が自己紹介をしなければならない。

 嫌だよーと心の中で叫んでいたが、そんなのはお構いなく、品川先生は私の名前を呼んだ。

「はい。………今宮宙です。えーと、田原中学校出身です。部活動は文化系の活動に入ろうと思っています。よ、よろしくお願いします」

 私はクラスメイトの前で噛まずに言えたことを心の中でよっしゃとガッツポーズをして、自分の席に座った。

 出来た、出来た。よく出来た、自分を褒めた。

 右側から誰かの視線を感じて、振り返ってみると、そこには隣に座っていた男子がクスクスと笑っていた。

 はあ? なに笑ってるの。

 なにさっきから私の方を見て、何か言いたげな様子で見るの。

 なんなのよ。あなたは一体なんなんだ。

 ニヤニヤと笑っていた男の子は、品川先生に呼ばれていた。

「なに寝てるの。工藤くん! 寝てるとまた単位落としますよ。また、留年したいの」

 品川先生は工藤という名の男に自分の腰に手を付けて、工藤に言う。

「………はーい」

 工藤はヒラヒラと手を上に挙げて、顔を机に伏したまま返事をしていた。 

「…じゃあ、自己紹介お願いね。ちゃんと立って。工藤くん!」

 品川先生は開いた黒目で圧力をかけたからか、工藤はむくっと起き上がった。