俺は今宮の肩を揺らしたが、一向に起きない。息をしているのか顔を近づけて確認すると、鼻息で呼吸を整えていたので寝ているだけだった。
「どうするか、もう夕方だしな。うーん」
　俺は腕を組んで、今宮の寝顔を屈んでみて考え込んだ。
　疲れたのか…色々…。教室に俺と今宮の鞄があったし、取りに行くか。
　まつ毛長いし、肌も綺麗だな。俺は今宮を見て、微笑んだ。
　今宮は変わらない。俺が初めて見た時から、何一つ。
　俺は目を覚めない今宮をおんぶして、小さい階段を降りてから教室へ向かった。
「はぁ、意外に重いんだな。まぁ、無気力だからか」
　俺は教室に行き、今宮を椅子に座らせた。
　教室に来てもスヤスヤと眠れている今宮を見て、目を覚めないのは一種の才能ではないかと思った。
「ふぅ。どんだけ疲れてたんだよ」
　俺は独り言を呟いて、無防備な今宮を見下ろす。
「俺をこんなに困らせるのはお前しかいないよ。ふぅ」
　そう言ってから、俺は自分と彼女の鞄を顔と右腕にかけて玄関に行き、靴を履きかえった。
　今宮は外靴を履かないといけないのに、ここでも起きないのかと今宮を降ろして見たが、起きない。もう家まで届けるしかないと自分の心の中で言い、今宮が起きるのを諦めて、今宮の外靴を履かせる。
　帰りはいつも地下鉄からバスを使って、帰っているが無理そうだ。
　俺は今宮を背中におんぶして、今宮家まで歩いて帰ることにした。
　今宮の足は白々で細くて、今でも壊れそうだった。
　左右の足を起きないように履き替えさせると、ゴロンと玄関のマットに寝転んでいた。
「汚いから、起きろ」
　今宮を玄関先のマットから起こして、今宮の右腕を持って俺の背中にやり、今宮の家まで運んだ。歩く人たちは、俺達を見てきた。