工藤は目を閉じたまま私に前もこういうことがあったと伝えて、ハンモックに横になっていた。確かに、今回が初めてではなく二回目だ。あの時も昼食の時に現れた。
「…そうだけど…」
 私は工藤に返事をするものの、なぜ工藤が私が助けてほしいって思う時に来たのかは分からなかった。あいまいな返事をしたからか、工藤は起き上がっていた。
「……知りたいのか?」
 工藤は起き上がって、私の目を見て言ってきた。
「…教えたくないならいいよ」
 私は工藤が急に起き上がって、私を見たので目を逸らして声を発した。
「さっきのは六弥が教えてくれたんだよ。始めはたまたま教室に戻ろうとしたら、君が泣いてるように見えたから」
 工藤は私の目を見て、言葉を紡いだ。なんでそんな見てくるの。
「……泣いてはない。ただ下を俯いていただけ…」
 私は彼から見たら、泣いているよう見えたのか。下に俯いていたら、泣いているようにしか見えない。泣いてはないけど、悲しいという感情と人間の理不尽さが心の中で疼いていた。
「……だけど……つらいんだよな」
 工藤は私の顔を伺うように聞いてきた。彼が聞いてくる度、顔を下げた。
 段ボールに座ったまま、顔はもう太ももらへんまでについていて、これ以上下げれない。
 だけど、工藤に私の今の状況の顔は見せられない。ひどい顔になっている。
 泣きそうになっている目を堪えているのを見られると、工藤の顔を合わせたらどんな顔をしたらいいか分からなかった。私は何も言わずに黙って、下に俯いて涙を堪えていた。
 工藤はその様子を見て、私に声を発した。
「…顔上げろよ」
 私の気持ちをよそに、工藤はどんな顔で私に言っているのか予想がつかなかった。
「…いや!」
 私は工藤の返答に拒否をした。すると、急に工藤の両手が私の顔を抑えつけた。
「…な、なにすんのよ!」