私は二人とも笑顔を浮かべて、私を見ていたのでそれが恥ずかしくて、二人の目を見て何も言えなかった。
「あ、そうだ。自己紹介忘れてたけど、私は朱(あかり)。こっちは桃(もも)。よろしくね」
 地下鉄に乗り、歩いたら学校の正門前で立ち止まり、私にそう言った朱は微笑んでいた。
 桃も同じく目を細めて私を見て笑って、よろしくと言ってから私を抱きしめてきた。
「え?」
 私は桃に抱きしめられて、身体は固まったままだった。
「ギュー、ギュー」
 桃はギューと私を抱きしめているだけだった。その脇から、朱が口を挟んだ。
「桃は気に入る人が出来ると抱きしめる癖があるんだよ。嫌だったら言っていいんだからね」
 朱は桃を見て、ふぅーとため息をついてから私に言っていた。
「うんうん、嬉しい。ありがと」
 私は桃を抱きしめ返した。桃は左右に身体を動かして、宙~と呼んで嬉しそうにしていた。
「二人ともだけずるい。私も入れて!」
 私たちを見ていた朱は羨ましく思ったのか、輪に入って三人で正門前で抱き合っていた。
 周りの高校生たちは何やってんの、朝から女同士でなどと言ってザワザワと私たちを見ながら学校に入っていた。
「…じゃあ、行きますか」
 朱は二人の肩をポンと叩いてから、仲良く学校に入っていた。
 玄関先で私と二人が話しているのを見て、クラスメイトの人たちは驚きを隠せないのか私たちを見て、なんで、なにどうしたの? とクラスメイト同士でコソコソと話していた。
 私たちは教室に入った。いつもは一人で入って、自分の机に鞄を置いてから椅子に座って窓を見つめるのがいつもの光景。
 同性の女子と教室に入ること自体が夢だった。
 同性の友達が周りにいなく、いるとしたらただ弁当を食べるクラスメイトのみ。
 それがどれだけ嬉しいことか周りには分かるはずもない。