今野琳が後ろを振り返ると、クラスメイト二人は気づいて手を振って、私たちを見ていた。

 私達も笑顔で手を振り返して、クラスメイト二人は私たちを見た後にお互い話をし始めた。

「…うん。食べよう。またね」

 私はそう言ったあと、品川先生が来たので、今野琳に手を振った。

「じゃあ、また」

 それを見た今野琳は、ニコッと口元を緩めて手を振り返してくれた。

「はい、おはようございます。昨日の今日で元気そうですねー、教材も今日配布されるので楽しみにしていて下さい」

 品川先生は教壇に日誌を置いてから、私たちに話しかけてきた。

 機嫌が良さそうに品川先生はにこやかに目を細めていた。

 クラスメイト達はえー! と言いながら、近くにいるクラスメイトは騒ぎ立てていた。

 私は教室の様子を観察して、頬杖をつけて呆然と話を聞いていた。

 品川先生は、昨日言っていた自己紹介についてクラスメイトみんなに伝えていた。

 自己紹介か。嫌だな、いつもこれで失敗する。

 幼稚園の頃、自己紹介に失敗したことがある。

 幼い頃なのに、まだ記憶に残っている。

 その時に、自分のことをなんと言おうか園に行く前日まで悩んでいた。

 あらゆることを考えて、短く具体的にを意識した。

 当日、自分の教室に着いた。

 今宮宙さんです。みんな仲良くしてねー、今宮さん挨拶お願いしますねと幼稚園の時の担任が言い、私の出番だと思い、息を吸って言葉を発した。

「い、今宮宙です。よれしくお願いしやす」 

 私は言って、頭を下げた。 
 
 あーー、やってしまった!?

 恥ずかしい。最後に噛むなんて。意を決して頭を上げると、クラスメイト達は笑っていた。 

 手提げ鞄を両手で握りしめて、下に俯いた。

 担任の先生はじゃあ、今宮さん、そこに座って下さいねと言ったので、私は椅子に座って、手提げ鞄を机に置いた。

 クラスメイト達が私を見て、くすくすと笑っていた。