「桃(もも)。もう少し言い方あるだろう。私が言うから。違うよ、今宮宙さんと仲良くなりたいんだよ」
 もう一人の女子組が私の前に立ちはだかり、口角を上げていた。
 私は目を丸くしたまま、そのもう一人に口を開いたまま、今言われたことに驚いた。
 その言葉で声が出なかった。
「あなたと仲良くなりたいの。私たち、あなたの近所に住んでいてね、毎日あなたの家を通って、学校行っていて。バス停も一緒なの。見ているうちに工藤くん・六弥くんの前では普通に話していて、話してみたいなって」
 もう一人の女子組はうん? と首を傾げて、聞いてきた。
「そう、私も仲良くなりたいの」
 女子組の一人桃は、私の手を握って微笑んで声を発してきた。
 私はまさか二人が仲良くなりたいと言ってくるとは思わなかった。
 本当に驚いている。私は目を丸くして、二人を見た。
 二人は私を見たまま、私が声を発するのを待っていた。
「えーと、私と本当に?」
 私は自分を指しながら、二人に聞いた。
「うん、そうだよ。私たちはあなたと仲良くなりたいの。信じられない?」
 もう一人の女子組は私の表情を読み取ったのか、私の気持ちを寄り添うように柔らかい口調で言ってきた。女子組の一人桃も笑顔を浮かべていた。
 その姿に私は本当のことかと疑問符が頭によぎっていたが、やはり本当みたいだ。
 この二人は、本心で言っている。
「……うん、信じられない」
 私は口を開けたまま、お互いを見合ってから首を振って小さい声を発した。
「…だよね。だけど、私たちは離さないよ。あ、バス来たよ」
 女子組の一人桃はそう言ってから私の腕を掴み、左腕にはもう一人の女子組が掴んできた。私は両手に花状態だった。二人は私を見てから、ニコニコとした表情でバスに乗り込み、世間話をした。
 地下鉄に乗っても二人とも笑顔を浮かべて、私に話してきた。