いや分からないのかもしれない。非常識にもほどがある。
 思い出すだけでいら立ちが収まらなかった。
 だけど、彼女がコンビニにいる姿を見て、俺は最悪な気分がすぐ消えた。
 彼女がサイダー飴を探しているのか、飴コーナーで座り込んで何を選ぶか決めていた。
 その姿に俺は微笑んだ。彼女が俺を探して、ここまで来てくれたことは嬉しかった。
 何事もなかったように彼女に俺は振舞った。
 俺の姿はいつものようにしていたけど、彼女は気づいていた。
 大丈夫なのかと俺を見つめながら、話を聞いて返事してくれた。
 彼女がいたおかげで、久しぶりに笑った。笑うことなんて今までなかった。
 両親が離婚するまでは。家に帰宅すると、母は酒を飲んで、テーブルに突っ伏していた。
 テーブルには十本以上のお酒を飲んだんだろう。
 飲み干した酒のボトルが床にもテーブルにも溢れかえっていた。
「ただいま」
 俺はテーブルに突っ伏している母に言っても聞こえない。
 自分の鞄を床に投げ捨ててから台所にある蛇口をひねり、手を洗っていた。
 すると、母が起き上がり、声を出していた。
「帰ってきたの。今日は早いわね」
 母は立ち上がり、片手に酒のボトルを持って、俺の両肩に母の両手がからめてきた。
「…酒臭いよ。また朝から飲んでたの」
 母はえへへと酒で酔っているのか俺の耳元で笑っていた。
 家は酒のボトルや洗濯をしたシャツなどがソファーなどに散らばっていた。
「そう。お酒は私を裏切らないからね」
 母は俺の背中にくっつきながら、目元を緩めて言っていた。
「……離して。ご飯どうする」
 俺は母の手をほどいてから、台所にあったフライパンを手にして聞いた。
「なんでもいいよ。剛が作ってくれるのならなんでもいいよ。えへ」