風がなびいていて、周りに草むらが左右に揺れていて踊っているかのようだ。
 それと共に彼は本来の彼に戻った気がした。
「…私の勝手でしょ。元気ならもう帰るよ。今日授業サボったんだからね。初めて授業サボったんだから」
 私は隣に彼がいたが、気にせずに早足で前を向いて歩き続けた。
「たまにはいいでしょ、息抜き」
 工藤は口元を緩めて、私の目の前まで来て何故か嬉しそうに私に言う。
 マラソンをしている男性や親子連れで手を繋いで話をしていたり、部活動の帰りなのか男子同士で肩を組んで、部活のことを楽しそうにしていた。
「…もう単位落としたらどうするのよ」
 私は周りの様子を見ながら、ため息をついて目の前にいる工藤に言いつける。
 工藤は気にしない、気にしないと手を左右に振って私の反応を見て楽しんでいたのだ。
 その後、私と工藤は言い合いをしながら歩いた。工藤は私の自宅近くまで送ってくれた。自分の方が大変だというのに、私の言うことは聞かずに私の自宅近くまで。
「…じゃあ」
 彼は一言私に言って、手を振っていた。私はその姿を見たら、自宅のドアを開けて入っていた。彼の内面を私にほんの少しでも見せてくれたのか…
 少しでも私に本音のカケラを話して、スッキリしてくれたのならいいけど。
 彼のことを理解しようとしても分からないことだと思うが、心のヒビを溶かしていきたい。
 私の悩みを聞いて励ましてくれたように。一方で、工藤の方は。
 私が自宅に入った後、少し歩いてから工藤は私の家の方に振り向いて微笑んでいた。
「…ありがとう」
 俺は今宮さんが自宅に入ったのを見届けた後、一人で礼を言った。
 担任のあの言葉を聞いた時は、腹が立ってしょうがなかった。
 腹が煮え切るくらいにあいつに何をしたらあんな人前で話さないのか、ちゃんと口にして言ったのにどう伝えれば分かってくれるのか。