彼は両手を後頭部にのせて、サッカーしている子供達を見て羨ましそうに眺めていた。
 本当に子どもたちを見る目は、あの頃を思い出しているかのように笑っていた。
 笑ってはいたが、その目は何もかも知っているかのような切なく目を細めていた。
「戻るって…小学生に」
 私は子供達を見て真っ直ぐに見つめていた彼を見て、風が強くなってきたので
髪が風になびいていた。
「ああ、あの頃は考えもなしに動いてただろ。今宮さんもなかった?」
 彼は返事をした後に、私の方を向いて聞いてきた。
 私も彼と同じように草むらに寝転んで、子供達を眺めた。
「…あったよ。何も考えずに友達に言ったり、先生に対抗したりしてた。今はその
様子ひとつもないけどね」
 彼に返事をして、私は小学時代を思い出す。あの頃は何も考えていなかった。
 頭では考えてはいたはずだが、まだ他人の気持ちなどそこまで考えていなかった。
 サッカーしている子供たちは、母親に呼ばれたのか帰る準備をしていた。
 準備が終わると、子供達はバイバイと手を振って、家に帰っていた。
「そんなことないと思うけど。俺にははっきりと物言えているじゃないか」
 彼は私の方を向いて、今まで見たことのない笑みを浮かべていた。
 いつもはただ微笑むだけなのに…大きい口を開いて笑っていたのだ。
「…それは……なんというか。えーと」
 その姿に驚き、私は目を泳がせて、空を見つめた。
「図星だろ。だろうな……俺には何とでも言えるしな」
 私の返答が図星だと思ったのかアハハと笑っていた。
「…何にも言ってないじゃない」
 私は言い返すと、彼はそう?と返事をして怖いくらいに笑っていたのだ。
「言っているようなものでしょ、顔で」
 彼は私の顔を見て、鼻で笑ってから大きい口で笑い続けていた。
「顔でって……。工藤笑いすぎだよ。なんか面白いことあった?」