工藤はまた目を擦ってから、品川先生に小さい声で言い見つめた。
「誰のせいだと思ってるの! あなたが起きないせいで授業遅れてるんだよ」
 品川先生は眉間にしわを寄せてから、クラス中に響き渡り、何故か工藤を責めていた。
 クラス中は頭に疑問符を浮かべていた。何の話?
 分からないけど、工藤くんなんかしたんじゃないの? 家族のこと?
 分からない。まぁ、授業やるよりいいんじゃない。宿題もしてないし。
 私の近くにいた女子クラスメイト達は工藤の方を見ながら、笑っていた。
 他人事だ。自分のことじゃないから、どうでもよく聞こえるんだ。
 周りからしたら、ただやる気のない男子生徒に見えるが、そうじゃないんだ。
 分かっていない、人の気持ちは他人には見せない一面があるのは、知っているはずなのに知らないふりをするのだ。
「…あ? 何言ってんだ」
 工藤は品川先生の態度が気に入らなく、睨みつけて声を発した。
「…聞こえなかったの? あなたのせいで授業が遅れているの。質問に答えて」
 怒り口調で工藤に向けられた言葉は、隣にいた私でも胸が窮屈になった。
 担任がそんなこと言う? 普通。家族の問題なら、個別で呼び出し話すべきではないのか。
 私は呆れて、品川先生に言い返そうと立ち上がろうとすると、工藤は机を叩いた。
 バンっとクラスメイト達はその音に驚き、工藤の席をクラス一同見ていた。
「質問って…家族のことですか?」
 工藤は黒目を見開いて、腸が煮えかえる想いで聞いていた。
「何回も言っているでしょ。そうよ、家族はどうなの?」
 品川先生はさっき程よりもかっかしていた。
「はあ? 前にも言ったはずですよ。クラスメイトの前で聞かないでって忠告しましたよね。なんなんですか!」
 鬼の形相になりながらも品川先生に倍返しをして、工藤は強い口調で言い返す。
「…こっちがなによ。もういいわよ」