翌日も工藤は変わらず、学校に来た。今まで来ていないことが嘘だったかのように。
 毎日私より早く来て、机に突っ伏していた。寝ているのかは顔が隠れて分からないけど毎回私が来ると、なぜかすぐ起きて、おはようと挨拶してくる。
なんだか私を待っているかのように…。授業が始まると、十五分だけ先生の話を聞いてから寝るという。毎回授業で行っていて、先生たちには目をつけられている。
「先生~、また工藤くん寝てます」
 同じクラスメイトが手を挙げて、工藤が寝ているのを先生に伝えると先生は工藤の席に来て言う。今は、国語の授業の時間だ。
「何してるの! 起きなさい。ああ、もう~。あーじゃあ、隣にいる今宮さん答えて」
 先生は教科書で工藤の頭をぽかっと叩いてからため息をつき、隣にいる私に指名してきた。
 指名されるのは初めてではないが、後ろの席にいるのであまり当てられない。
 久々に先生に指名されて、私は戸惑った。みんなが私を見てきて、動揺した。
 答えは分かっているが、みんなに見られていて、言葉に出なかった。
「えーと……」
 私は目を泳がせて、黒板の方を見て、クラスメイトの視線から外れようとするが、どうしても何も答えられなかった。すると、工藤は立ち上がり、目の前にいる先生に立ちつくした。
「…工藤くん、なに? 答えられるの?」
 先生は首を傾げて、工藤を見てから声を発した。
「はい。答えられますよ」
 ニコッと笑みを浮かべて、工藤は先生と目を合わせて口を開いた。
「じゃあ、答えて」
 先生は作り笑いをして、優しく工藤に聞いた。
「…この空欄には、火」
 工藤はすぐ答えて、席についた。椅子に座ると、私の方を見て笑みを浮かべていた。
 答えられるなら、答えればいいのに……。私は呆れた表情で彼を見た。
 何を考えているのか分からないが、無表情で前を見つめていた。
「正解。今度からちゃんと答えて下さいね」
 先生は咳ばらいをしてから、通常の授業に戻った。
「…なに笑ってたのよ」
 私は前を見つめたままの工藤に聞いた。
「……別になにもないけど…」