「うん、美味しいね」
 私もストローを持ち、飲み始めた。とても濃厚でいい香りがして、おいしかった。
 私はオレンジの香りの匂いを嗅いで、私の体中に染み渡る。
「…話は変わるけど、工藤のことなんだけど……」
 六弥くんは飲むのをやめて、私の方を見てくる。
「うん? なになんかあったの?」
 私も飲むのをやめて、六弥くんの目を合わせて聞いた。
「……今宮さん、工藤のことで一つ言っておくことがあるんだ」
 六弥くんは真剣な表情を浮かべて、私に言ってきた。
 真面目そうな顔つきで聞いてくるので、私も六弥くんと同じように真剣な表情で見合った。
 私は素直に返事をした。
「…工藤は今宮さんと話したいって言ったのは女性で初めてなんだ。今までは母親のことも重なって、あまり女性と関わらなかったんだ。だから…工藤にとっては今宮さんは何か意味があることだと思うんだ。僕もよくは分からないけど…」
 六弥くんは頬杖をつけて、目を見開き、パチパチさせていた。
「私に何かあるの?」
「それは僕には分からない。だけど、工藤は何かあるのかもしれないね」
 六弥くんはうーんと言いながら、私と同じく首を捻って肩を上げていた。
「何か……」
 私は声を発し工藤にとっての私を考える。私がなんで工藤と何かあるのか分からなかった。
「うーん、何かとは…何かは工藤にしか分からないからね」
 六弥くんは腕を組んで、工藤のことを考えて私に返答していた。
「そうだよね」
「だけど、工藤とは嫌だと思うけど、関わってあげてね」
 六弥くんはジュースを一気に飲み干してから、テーブルに置いてあった携帯を手に取り、弄り始めた。どうしたんだろうと不思議そうに私は彼を見ていると、立ち上がり私に言った。
「ごめん。急に用事が出来て……。また今度」
 私に言ってから椅子から立ち上がり、右手で携帯を持ちながら何かを見ているようだった。