ズボンのポケットから携帯を出して、六弥くんは時間を確認したかったのかロック解除をして確かめていた。
「あるけど…なに?」
 私は声を発して、六弥くんを見つめる。
「いいこと教えてあげる」
 イヒイヒと笑いながら、六弥くんはどこかへ行こうとGO~と言って楽しそうにしていた。
 私は首を傾げていたが、六弥くんは、行くよ~、GO!!出発!と掛け声をあげていた。
 座ってた私を六弥くんが親指を後ろにし、行くよと合図をし立たせて、私を連れ出した。
 どこ行くの? と私は六弥くんに玄関箱の前で聞く。
「内緒だけど、元気になれそうな場所」
 六弥くんは人差し指で鼻を立ててから、私にある所に連れていたのだ。
 そこは、歩いてすぐの所で、森林に囲まれている喫茶店だった。
 急に木々が集まっていて、そこのエリアだけ森の洞窟になっていて、そこにいるだけで空気が澄んでいた。私は息を吸って両手を広げて吐いた。
 空気は私の肺の中に入って、リセットした気持ちになった。
「ここいいでしょ。さっきまで都会にいたのに今は自然に囲まれていて不思議な気分でしょ」
 六弥くんは私の前に立って言った。草が生えている所はカーペットのようになっていた。
 周囲を見渡すと、家族・学生たちが楽しそうに話をしていた。
 ここにいる人達は、心から笑顔で溢れていた。
「うん、六弥くんの言う通り。元気になれる場所だね」
 私は店の前で顔を上げて、空とともに店全体を見ていた。
「来たからにはおいしいの食べて帰ろう」
 六弥くんはズボンのポケットに片手を入れて笑みを浮かべてから、店のドアノブを掴んで店に入った。
 入ると、そこは緑・白の壁紙をあたり一面に貼ってあり、本当の森の喫茶店みたいだった。
 私達はカウンターで椅子に座り、森のジュース二つ頼んだ。