まだあの時よりも。昔のことを思い出していた私が暗くなっていたのを工藤が立ちがって、言葉にした。
「……大丈夫って言うのはね、二つの意味がある。例えば、ある店でフォーク入りますかと聞かれる。大丈夫ですとそれはいらないですって意味。もう一つは、本当に大丈夫じゃないっていうのに大丈夫っていう人。今宮は後者だよね。大丈夫って無理して言わなくていいから」
 私の右肩には、後ろにいる工藤の右手が置かれた。
 抱きしめるのではなく、ただ私の肩に置いて慰めてくれた。
 それだけのことなのに、私は涙を堪えて工藤の手を添えた。
 工藤は何も言わずにただ私が涙を止まるのを待っていてくれた。
十五分後
「……ごめん。ありがとう」
 私は工藤の手を強く握ってから、工藤と向き合った。
「…いや…別に…うん」
 工藤は私を見た後、目を逸らして私から離れた。
「…じゃあ、行くね」
 私は一人で図書館を後にした。工藤はただ突っ立て、私の後ろ姿を見ていた。
             *
 私は自分の教室へ戻り、さっきほど同様、椅子に座って平然とした様子を出した。
 三人とも私の顔を見てから何かを言いたそうな表情を浮かべていた。
 数分後、私が来ても三人で話を続けていた。
 私は自分の机に戻り、右側に机を引っ掛けて少し開いていた鞄を手に取り、鞄の中から弁当を出して広げた。
 箸を持ち、先ほど食べれなかったソーセージを口に運んだ。
 ソーセージの味は口の中がピリッとしているけど、味が残るような感触であった。
 ソーセージを食べる前は食べるだけの口に運ぶ工程だったが、今はなんだか物足りない。
 味はするのに、全然味気ない。学校にいるのは変わりないのに…… 
 なんでこんな私寂しいんだろう。弁当のおかずを口に入れ食べて、咀嚼音を自分で噛みしめながら三人の話を新幹線が通るような速さで聞いているふりをしていた。