「……お前が辛そうだから」
 工藤は私の目を少し逸らしてから、声を発した。
「あのね女子はグループから離れちゃいけないの。男子にはね、分からないでしょうけどね」
 私は髪をかき分けて、はぁーとため息をついて頭を抱えた。
 工藤の方に身体を向けて、彼と目を合わせるように見た。
 工藤はそんな姿の私を見てから、また腕を掴んで図書館の中に入った。
 図書館には数人の学生がいるくらいで、あとは図書委員一人しかいなかった。
 私たちは窓際のテーブルに座って、私は意のままに工藤の隣に座った。
 工藤は私が腕を離そうとしても離さなかった。
「なんなの。一体」
 私は隣に座っている工藤に向けて目を丸くして、彼の目を見据える。
「今宮さんには苦しんでほしくないんだよ。俺が嫌なんだよ」
 工藤の髪は走ったせいか崩れていて、うなる毛が外に向いていて、目がはっきりと見えた。
 潤んでいる大きい目を見開いて、私の目をただ見つめる。
 私は工藤の目から逸らすことが出来なかった。悲しそうな……心配しているような…
「……大丈夫だから。こんくらい平気。中学校の時よりはね」
 私は工藤の腕を手で払い、椅子から立ち上がった。
 頭を手でかいて、両足を広げて、私は口から息を吸って吐いた。
 工藤は私の話がまだ続くと思っているのか黙ったまま、私の言動を見ているだけだった。
「…っ私はね。今の現状を満足している訳ではないから。一人になるよりはマシなだけ……」
 私は右拳を強く握りしめて、下に俯いた。泣くほど……辛くはない。
 こんなのは中学よりも辛くはない。中学の頃は、クラスに友達はいた。
 だけど、その友達は私を裏切った。私が秘密にしていたことを仲良くなったと思い、友達に話すとすぐクラス中に広まった。そこから、私は友達が一人もいなくなった。
 唯一の友達は海外の高校に進学したため、いないのと同じだ。