私は自分の教室に戻り、席について顔を机についた。
 クラス一人誰も挨拶はしてくれないし、一人でいたって、何も言われない。
 相変わらず、今野琳達は自分達の世界を作り、私がいてもいなくても楽しそうにしていた。
 机から顔をつけるのをやめて、薄目で彼女たちを見渡してからまた机に突っ伏した。
 机で顔をつけても寝れる訳がない。目を瞑って、私は寝たふりをした。
 すると、隣の席から音がした。ガタッと椅子を引く音が聞こえた。
 どうせ私と席が離れている所から音がしたのだろうと気にせずに、机に伏していた。
 だが、右側から何か視線を感じて、起きるとそこには工藤が座って、私を見ていたのだ。
「……っ」
 私は彼と目が合ったが、視線を外してまた机に顔を付けた。
 なんなのも、もう。話したいなら、話してよ。
 私はさっきほどの耳を塞ぐ行為に胸がザワザワした。
 初めて誰かに触れたことで驚いていたのだ。
 意を決して、私は右側にいる工藤を机から起き上がって見る。
「なんなの、もう」
 私は真顔で工藤に聞く。工藤は何故か私を見て、微笑んでいた。
「…なんで笑ってんのよ。面白くないから」
 私は睨みつけるかのように工藤を見てから、声を発した。
「……別に…」
 工藤はそう言ってから、黒板側の方を真正面に向いて私に言葉をかけた。
 私は工藤にイーと歯を見せて、外の景色を眺めた。
 そんな中、午前中の授業が終わり、昼食の時間になった。私は昼食の時間が嫌いだ。
 今野琳と仲良くなりそうだと思いきや、クラスメイト二人と楽しそうにしている。
 だが、お昼だけは私も含んでいる。
 新学期が始まってから、1回だけ私が声を発したきり、私は空気いや木だ。
 最初は存在するだけの空気だと思っていた。けど、今は違う。
 存在していても何も意味がなかった。