何回か私が聞くとやりとりが続くようになっていた。
「あー、じゃあ、好きな食べ物は?」
 工藤と話が続くようになったので、私はさっきほどの表情とは変わり、少し微笑んで工藤の横を見て歩きながら、聞いた。
「……アイスクリーム」
 工藤は真顔で私を見てから、ポツリと声を発した。
「あんたは」
 私の答えに返事をすると、工藤は私に聞いてきた。
「私は飴かな」
 地下鉄を出ると、顔に手をかざして、眩しい空を見つめながら、私は答える。
「へぇ、珍しいな。食べ物で、飴とか。そんなに美味しいか?」
 工藤は珍しい目で見るように、聞いてきた。
 あまりうまく話せないと言っていたのに、前よりもはるかに話していた。
 やはり、話せないって嘘だよね。
 でも、嘘じゃなく見えたんだ。ほんとに話せなくなったみたいに……
 私は工藤の変わりように、また困惑していた。こんな短時間で変わるものなのか。
 工藤の中で何か思い出させるものがあったのだろうか。
「そうだね。小さい頃に駄菓子屋で買って。それからかな。あんまりよく覚えてなんだけど」
 私は自分の歩く足元を見ながら、工藤に言う。
「へぇ……」
 工藤は興味がなさそうに返事をしていたが、私の顔を見て何かを気にしているようだった。
「アイスクリームも珍しいんじゃないの? ってか食べ物じゃなくない」
 私はそう言うと、工藤は苦笑いを浮かべていた。
「だったら、飴もだろ」
 工藤は私に反抗するかのように答えた。前話していた工藤と変わらない態度であった。
「まぁ、そうだね。でも、それほど好きってことだよね」
 私はクスッと口元を手に添えて、工藤に言う。
「ああ」
 工藤は私を見て、返事をしていた。
「ってか、普通に話せるでしょ。さっきとは全然違うけど…」
 私は平然とした顔で前を向いて、工藤に声を発した。
「………それは……少し違うかな。わからないけど」