前にいたボブの女の子が私に話しかけてきた。ボブの女の子は私の名前を知っていた。
 クラスメイト全員に渡された名簿で名前を確認したのだろう。
「…うん、そうだけど」
 私は相手の様子を窺いながら、ボブの女の子に答えた。
 どこ中? とボブの女の子は首を傾げて、私に聞いてきた。
 周りのクラスメイトは、はじめましての人達と私のように様子を窺いながらも、作り笑いをしたり、真面目な表情などして話をしていた。
「田原中学」
 田原中学と私が答えると、ボブの女子は嬉しそうに微笑んでいた。
「そうなんだ、私は、今野琳(こんのりん)。田村中。意外に近いね、私の地元の隣だね。よろしく」
 今野琳は微笑むとえくぼが出て、可愛い印象で私に話しかけてきた。
「うん、よろしく」
 私は今野琳のにこやかで穏やかな様子に緊張感が抜けて、肩を落として笑った。
 そして、体育館に向かい、動いた。
 体育館に行くと、上級生や職員がたくさんいて、緊張感が増してきた。
 さっきほど話した今野琳が椅子から立ち上がり、返事をしていた。
 十番 今宮宙さん
 私の名前が呼ばれると、私も同じく、はいと返事をして立ち上がった。
 それから、最後まで一人ずつ呼び、長い校長の話を聞いて、緊張して座っていたので、腰やお尻が痛い。
 はあー、やっと終わった。ため息をついて、クラスメイトが順番通りに退場していた。
 体育館から出ると、クラスメイト達はバラバラになり、初対面の人とも、はあ、緊張したー、やっと終わったよなどさっき終わったことを話していた。高校生になったのだという実感が沸いてきたのだろう。
 緊張感をほぐすようにみんな話をし、仲を深めようと初日から努力しているように見えた。
 それは、私もその一人だ。
 私はまだ話しかける勇気までなかったので、一人で教室を戻ろうとしたら、今野琳が話しかけてきた。
「ねぇ、連絡教えて」