君の雨が溶ける

 六弥くんはマンホール管に工藤が座っていたのを立たせてから、話をし始めた。

「工藤。今からやることは一番効果的なやり方だからな」

 そう言ってから、工藤の腕を掴んで、抱きしめた。

 男同士のハグ。
 
 同性同士の抱き合いを初めて見たので、目を丸くして私は見た。

 すると、工藤は徐々に顔色が良くなっていたが、彼は声を発した。

「……はぁはぁ。俺だけじゃ、ダメなの」

 工藤は切なそうな表情をしてから、涙を流していた。

「はぁ、やっぱダメか。今宮さん、悪いんだけど。工藤にハグしてくれない?」

 工藤の両肩を持ってから離して、六弥くんは真っ直ぐに私の方を見て言ってきた。

「え? いやいや、なんで私!?」

 私は動揺した。まだ知り合って間もないのに、工藤にハグ。

 あまりの驚きに目を見開き、六弥くんに問いかける。

「誰でもいいわけじゃないんだよ。前に発症した時は、僕が久々に工藤と話した時になって、今みたいにハグしたら治ったけど。今回はそうはいかないみたいなんだよね。今宮さんも一応工藤と話したことあるから大丈夫かなと……」

 六夜くんはお願いと両手を揃えて、私に言ってきた。

「……ハグだけだよね?」

 私は六弥くんに聞いた。

 ハグ。ハグだけなら、猫を助けると思って…これは人助け。

 愛のあるハグじゃない。

 人助け。

 自分で言い聞かせながら、六弥くんに言ったのだ。

「そう。さっきみたいにやれば大丈夫」

 六弥くんは笑顔でオーケーと指でポーズをして、私に伝えた。

 私は返事をした後、一歩足を踏んで、工藤に歩み寄る。

 涙を流しながら立ち尽くしている工藤の右腕を掴んでから、工藤の胸もとに近づけようとした時、工藤が私の左腕を瞬時に掴んできたのだ。

「…っ。ちょっと……」

 私は力強く抱きしめられて、苦しかったので、工藤に声を発したが、応答はなかった。

 それを見た六弥くんは声を発した。