君の雨が溶ける

 腕にはかすり傷があった。急いでカバンに入っている絆創膏を取った。

「いいから、やめろよ」

 工藤は抵抗するものの少しの傷で甘く見てはいけない。傷が炎症して腫れたりひどくなる。

「傷出来てるんだから、腕出して」

 私は工藤の腕を引っ張り、絆創膏のテープを剥がして腕に絆創膏を貼った。

 工藤は立ったまま真正面を向いて、黙ったままであった。

「これで大丈夫。はい。あれ?工藤?どうした」

 私は工藤の腕に絆創膏を貼った後、工藤の目を見る。

「……いやなんでもない。お前はいつもそんなのか?」

 工藤は困ったような嬉しいような複雑な顔をしていた。

「はあ? 傷できてたら、治療するのが普通でしょ。ほっとおくわけがない」

 私は腰に手をつけて、なに言ってんのと怪訝そうに言った。

「…そうか。そういうやつなんだな…」

 黒目を下に向けて工藤は、切なそうに呟いていた。

「え? それどういう意味?」

 私は何を言っているのかよく分からず、工藤に聞き返した。

「いや、なんでもない。じゃあな」

 工藤は慌てた様子で目を泳がせて、私に言い、どこかに行ってしまった。

「いや、ちょっと……」

 私は工藤を引き止めようと声を掛けたが、言葉さえも聞かないで去っていた。

 公園にはまだ子供たちが笑う声が響き渡り、私はその声が逆に時計が止まったかのように感じた。

 今でも冷たい風とともに子供の声が耳に通る。
 
 工藤、どうしたんだろう。

 首を傾げてから私は自宅に戻った。 

 自宅に戻った私はいつも聴いているラジオをかける。

 今日もやってきました、みんなのラジオ。

 パーソナリティーの方はいつもと同じ明るい声でリスナーに言っていく。

 パーソナリティーの方はリスナーの手紙を読んで、笑ったりアドバイスをしてくれた。

 私が面白いと思うくっちゃんからの手紙だった。

 ペンネーム くっちゃんからのリクエスト。