君の雨が溶ける

 仲良くないのに……。

 どうして、私。  

 品川先生から預かった工藤の住所が書かれている紙を握りしめていた手を広げて、見た。

 品川区……。

 学校から近い距離にあった。

 行けないこともないが。

 教室で立ち尽くして手に持っていた紙を見て迷っていた結果、私は行くことにした。

「……家に行って、渡すだけだし。うん、すぐ終わる」

 私は自分を納得するかのように右手に持っていた紙を見て、左手には預かった封筒を持って歩き始めた。

 学校を出て、右の角を曲がり、まっすぐ行くと工藤の家に着いた。

「ここか。ここの一〇九号室。あった」

 私は工藤の家にたどり着くと、インターホンを鳴らした。

 ピーンポーン ピーンポーン

「はい」

 出てきたのは、工藤本人だった。

「工藤。これ…」

 品川先生から預かったものをすぐ渡すと、工藤は周りを見渡していた。

「…なんでお前が。…おい、こっちこい」

 工藤はまだ周りを見渡しながら、焦った様子で不安そうに私に声を発した。

 私は返事をすると、工藤は早歩きで私が後ろについてきてることをチラチラと確認しながら、近くの公園に着いた。

「なんでうちに来た?」

 睨みつけるような目で工藤は私を見て、冷めた口調で私に言い放つ。

 公園には小学生が楽しそうに笑って、遊具で遊んでいた。

「品川先生に頼まれたから、仕方なく」 

 子どもの賑やかな声とは裏腹に私はため息をついて、工藤に言う。 

「…そうか」

 工藤は私にただ返事をするだけだった。

 私に言いたいこと言っておいて何も言うことない?

「ってか、礼くらいあってもいんじゃないの?」

 そう思ったので、私は工藤に反発した。

「……悪かったよ。じゃあな」

 工藤は口を尖らせて、不満がありつつも私に礼を言っていた。

「ちょっと待って。腕に怪我してるよ。あ、待ってて」

 工藤がすぐ謝る様子を見て私はクスッと笑ってから、視界が工藤の腕に目に入った。