君の雨が溶ける

「相変わらず、この学校は綺麗だね」

 私は独り言のように呟いた。その声が聞こえてきたのか六弥くんは返事をしていた。

「…そうだね。宙ちゃんはなんでこの学校にしたの? 女子校とか近くにあるでしょ」

「…友達と楽しそうにしてるから」

 私は六弥くんと歩きながら、本心を口にした。

「え?」

 六弥くんは目を丸くして、私を見てきた。

「この学校の動画あるでしょ。あれを見て行きたいと思ったの」

 私はそう言うと六弥くんはなんて思っているかは顔だけで判断つかなかったが声を発した。

「いいじゃん。あいつ、そっくりだな」

 六弥くんはポツリと呟いたので、聞こえなかった。

「え? なに?」

「いや、何も。行こう」

 六弥くんはなんでもないと口にするだけで、あとは何も言わずに教室まで黙って歩いた。

「着いたね、じゃあ、また」

 六弥くんは手を振ってから、自分の机にカバンを置き、椅子に座っていた。

 私も手をあげて、自分の椅子に座った。 
 
 座ると、今野琳が私に話しかけてきた。

「おはよう。ねぇ、あの人ときたの」

 今野琳は興味津々に六弥くんを指差して聞いてきた。

「おはよう。あの人とって。あー、六弥くん?」

 私はカバンの中に入っていた教科書類を取り出して、自分の机に置いた。

「うん、話しただけだよ」

 私は頷いて、答えた。

「…そうなんだ」

 今野琳は私に返事をして、黙ったまま自分の席に戻っていた。

 私は何が何だか分からず、首を捻った。普通通りにしただけなんだけど。

 どうしたんたろう。そして、朝礼が始まり、あっという間にお昼時間になった。

 今野琳と他のクラスメイト二人で机をくっつけて、お弁当を食べていた。

 今野琳と他のクラスメイト二人だけで話していたが、私は中々輪に入れないでいた。

 話の話題は、昨日やっていたドラマの話題だ。

「あの俳優さん、カッコいいよね」