工藤は満面な笑みを浮かべて私の手を掴む。本当に心から嬉しそうに私に話しかけていた。
「……っ、私も工藤に会えて変わった。友達も一人もいなくて、ただ食事だけするクラスメイトなどにも何も言えなくて、どうしようもなかったけど、会ってから徐々にはっきり言えるようになった。だから、私も工藤に出会えてよかった………っ」
 私は右手をそっと彼の頬を触れて、彼を見つめる。
「……っ……ありが……とう」
 彼は唇を?みしめながら、吸い込まれるように私の頬に手を差し伸べて、私に言う。
そう言ってから、私を抱きしめて泣いているのか雨なのか分からないが、雨が溶けるように工藤はそのまま消えていた。
 私はゆっくりと涙が出て、工藤の頬に手を伸ばしたまま、彼は本当にいなくなった。
 近くには、彼からもらったラジオの投稿用紙がびしょびしょに濡れていた。
 私は立ち上がり、その一枚一枚を拾い上げた。
 警察官に男の件で話を聞きたいと言われたが、拾ってからにしますと伝えると、警察官は私が拾い上げるのを待ってくれた。
 警察官は私の想いを汲み取ったのか、ただひたすら拾う私を見ていた。
 雨がしっきりに降る中、小さい頃、飴を持っていた私が落とした飴は彼の元で溶けていた。
 彼の手元で静かに君の雨が溶けて、地面まで沈んでいた。
 いらっしゃいませ~
 駄菓子屋のおじいさんは相変わらず、店番をしているみたいだ。
 三十代の夫婦だろうか、何かを買いに来たみたいだ。
 飴一個と昔懐かしいお菓子を数個買っていた。
 嬉しそうにしながらも、夫婦は手を繋いで帰っていた。
 あなたはこれからどうしますか?
 誰かのため? 自分のため? それとも、人生放り投げますか?
あなた次第です。
 君の雨が溶ける前に、あなたの選択を待っています。
 君の雨が溶ける前に……