私はその文章を読んで、胸が裂けそうなほど苦しくなった。それは…。
 ある人が僕が泣いていた時に傘を差し出してくれた。
とても嬉しかった。その時、僕はただ傘を差し出してくれただけなのに、それだけでも心が晴れたんだ。だから、僕はある人と共に支え合って、ある人が苦しまないで生活できるのを確認したら、僕はこの運命のまま定めを全うしていく。
 そう、書かれていた。工藤が学校に来ていなく私が工藤の家の近くまで来た時に倒れこんで泣いていた時だった。
 あの時の感情をラジオの投稿にと思って、書き留めていたのか……
 こんな十年間も。私と初めて会った時から、ずっと。
 もしかして、私に渡すためにこの投稿文章をずっと取っといたの?
 こんなにも…百枚以上はあると思うが、毎日毎日私との話やたわいないことなど
 細かいことをよく書いていた。ある人はよく飴を食べる。ある時は、泣いて笑って、逆に僕が慰められることもある。問題を抱えているある人だけど、なにでも耐え抜こうとする姿は僕には強く思えた。弱いと思っているある人だけど、僕には光だった。
 …一番印象的だったのは、私のことをどう思っているのかが書かれていた。
 ある人のことは存在自体が愛おしい。僕のことを言ったら、どうなるのだろう。
ある人は多分、怒る。いや、僕に申し訳なさそうに言う。これいずれは見ると思うから、言うね。僕は本当に恵まれていた、ありがとう。
 工藤の言葉がひしひしと伝わってくる。私は投稿文章の用紙に涙一つ零れた。
 昨日も泣いたのに、泣き疲れなんて感じないほどよく泣いた。
「……っ……っ…工藤……」
 私は投稿文章の用紙を握りしめて、顔を机について工藤の名前を呼んだ。
 でも、彼はもう現れない。どこにもいない。そこで私は紅茶を頼んでいたので、会計に行こうとした時、受付の方が私に言った。
「一緒にいた方が払って、帰りましたよ」