「…そう。…うん、工藤に言われたの。六弥くんに渡したものを見てくれって…」
 私は六弥くんを見ると、戸惑った様子であったが言葉にしようとしてくれた。
「……電話で言ったとおり。これ…」
 隣に置いた紙袋を私の方へとテーブルに置く。
「……これって……」
 私は言葉を発して、中身を見て出した。出した中身は、ラジオの投稿文章だった。
「……工藤はこれを渡しに来て、こう言った。今宮に渡してほしい。それだけ。あとは見れば分かるって…今宮さん分かる?」
 六弥くんは私に首を傾げて、聞いてきた。
 私は中身を見だした。その中身は、くっちゃんさんの投稿文章だった。
 工藤が……よく聞いていたくっちゃんさんなの。
 くっちゃんさんは、私が10年以上も聞いているラジオの常連の投稿リスナーだ。
 その投稿内容はいつも面白くて、笑っていた。あの人を守るために僕はやるべきことがあると投稿していたくっちゃんさんは、工藤だったってこと? まさか。私は今までの投稿を聞いていたはずなのに目にすると違う文章に思えた。同じ文章なのに、何故か違く見えた。私は一つひとつの文字を目で追って、読んだ。
「……なにこれ。今まで私のこと見てきたことを文章書いていたの。あの人って……私のことだったの?」
 私は文章を読みながら、自分の口に手を当てて、堪えるように目に涙をためていた。
 まばたきを繰り返しながら、投稿文章をめくって、一日分をゆっくりと読んでいく。
 涙が収まらなかった。
「…全部、今宮さんのことだったんだね。僕は読んでも分からなかったけど…。大切なことが書かれていたんだね。…僕はさっきに出るね。ゆっくり読んでいて」
 六弥くんは私に気を遣ってくれたのか、さっきに出てそれ以降言葉にしないでくれた。
 私は六弥くんに頷いて投稿文章に目を通した。そこには最近の投稿文章が書かれていた。
「……っ」