「それでも工藤にとっては話したようなもんだよ」
 六弥くんは私に何気ない気遣いをして言ってから、窓の景色を眺めていた。
「……六弥くんは工藤となんなの?」
 私は思ったことを口にした。話したようなものだよって言うのは関係性がないと言えない。
「中学の先輩後輩であり、幼馴染」
 六弥くんはニッと口角を上げて、私の答えに応じてくれた。
「幼馴染。なるほどね」
 私は納得したかのように頷き、六弥くんを見た。
 顔もイケていて、性格は穏やかそうなのが第一印象。工藤と幼馴染ね。
「工藤は家の事情で中々学校に来れないんだ。こないだ奇跡的に二日間来た。
二日間来るなんて工藤にとってはいい知らせだよ」
 六弥くんは人混みが少なくなり、空いてきた車内で私の隣にいて私の意思とは関係なく、話しかけてくる。
「…ふーん。私には関係ないよ」
 なんで工藤の話聞かなくちゃいけない。
 二日間くらいで話しただけだし、そもそも席が隣だからっていう理由でしょ。
「関係なんかなくはないよ、あいつにとって、何かがあるはずだから」
 私に六弥くんは淡々と話しかける。何かがあるはず…… 私には分からないことだ。
「…そうなのね。でも、私も手一杯だから自分のことで」
 六弥くんが私を見ながら話しかけてきたので、あまりにも見ていたので目を逸らしてそっけなく言った。
「……そう」
 数分、六弥くんは私の顔を見て、なにかを考えているように返事をしていた。
 バスの停留所を降りて、六弥くんと私は地下鉄に乗って降り、学校まで成り行きで一緒に行くことにした。
 地下鉄から降りると、歩いて五分もかからないところに学校はある。
 学校の周りはビルで溢れているのに、学校の近くにあるカフェらしきものは木や花などがたくさんある。若い人達は、SNSで映えると話題になって、昼間になると人だかりができているのだ。なんだろう、カフェかな?