知っていたら、俺に言うはずだ。真相は闇の中に葬られていた。
 幽霊の俺じゃどうしようもないけど、俺は思った。もういいのではないのかと思えたのだ。
 今宮を救えたからいいのではないかとふっとパソコンから目を離してキーボードを両手に置き、考え込んだ。
 もう飴の効果は分かったことだし、俺は忘れることにした。
 パソコンの電源を消して、俺は椅子から立ちあがり、腕を組んで漫画喫茶を出た。
 漫画喫茶では、友達と楽しそうに笑って漫画を読んでいたり、シャワーを浴びてきた人もいれば、眠そうにしながらもセルフでお茶を取りに来る人もいた。
 いろんな人がいる中で、俺は一人立ち尽くした。
 周りから声がするものの一人だけの世界にいる感覚だった。
 俺と同じように飴の効果で亡くなった駄菓子屋のおじさんの娘の彼氏さんはどんな思いだったか分かる。
 自分がこの世にいなくなって、誰かが心配してくれる人がいることが嬉しかった。
 だけど、その他にも俺は一人の人間として輝いていたかった。
 その輝きが消え失せたのがとてもとても空しい。
 空しい中でも心配してくれる人がいるのは嬉しい。空しい、嬉しいの気持ちが交互に積まれていく自分がいる。空しさと嬉しさが混在して、俺は目を瞑った。
 人が俺を通過する中、目を開けて歩き出した。早足になり、俺は今宮がいた公園に戻った。
「……っ。もういないよな」
 俺は独り言を呟いて、周りを見渡してもいなかった。
 彼女を救ったはずだが俺は胸騒ぎがした。何故か彼女がまた誰かに襲われるのではないか。
 一方で、今宮は。私は彼が去ったあと、しばらく座り込んで泣いていた。
 泣きこんだら、赤い目でふらつきながらどこかに歩いた。
辿り着くと、道路沿い付近まで歩いていて、自転車にぶつかりそうになりながらも、下を俯いて考え込み歩いていた。
「……っ。なにしてんだろう、私」