「君、そこで何してるの?」
 ある人とは、駄菓子屋のおじさんだった。
 俺はもう幽霊になっていて見えないはずなのに、あのおじさんには見えていた。
「……俺が見えるんですか?」
「見えるよ。亡くなったんだね」
「はい、昨日亡くなりました。おじさん、俺が亡くなるの感づいてましたよね? おじさんは何者なんですか?」
 おじさんに聞くと、全てのことが分かっているかのように冷静沈着な対応であった。
「…僕はね、ただのおじさんだけど、十年前に俺の娘がいじめられてたんだ。どうしても救いたいって思って、ある記事を読んだ。飴で誰かを助けることが出来るって書いている会社に電話をして、十個注文した。試してみたら、あることが分かった。それに副作用があった。飴を買った人間には助けを、受けとった人間には死と飴を買った人間の生きる光が見えるようになった。娘は助かったが、彼氏が十年の月日が経ったら、亡くなった。それで分かったんだ。この飴を封印しないと…誰かに被害が及ぶって思い、捨てた。けど、駄菓子屋の飴の中に混じっていた。君を見た時、娘の彼氏と同じ表情をしていた。何かを見て、目を丸くしていた。君に聞いたら、そうなのって顔をしていたから、僕はなんてことをやってしまったんだって思って、自分自身を失望した。でも、君は違かかった。彼女と同じ気持ちだったから。自分の存在を認めてなかったから。今でも僕は申し訳ない気持ちでいっぱいだ」
 おじさんは俺の目の前で下を俯いてから、俺を見て土下座をした。
「おじさん……。頭を上げてください。俺は彼女に救われたんです。あの飴のおかげです。亡くなっても俺はおじさんを責めたりしません。逆にありがとうございます」
 俺はおじさんに感謝を伝えた。今更、後悔なんてしていない。
「……っ、ありがとう………」
 おじさんは俺の両手を握って、感謝を述べて、今宮と同じく目に涙を浮かべていた。