「……私は…工藤にとって必要な存在だって…こと」
 私は工藤に聞いた。彼にとって、私は特別な存在ということは必要と同じなのかと思えた。
 誰かに必要とされるのは嬉しいことだ。
 誰かの頭の中に、私が存在してくれるなんて…思いもしなかったからだ。
「うん」
 工藤は私を飽きるほど見つめて、首を縦に振った。
 私はそんな工藤を見て、呆然とした。
「………っ……工藤…なんで死んだのよ! 私を置いて」
 私は彼を抱きしめようとしたが、すり抜けてしまった。だけど、彼の空気を感じられた。
 なんとも言えない工藤に纏う匂いと呼吸が伝わってきた。
「俺はもうこの世にはいない。けど、ある言葉だけは残した。今までずっと言葉にしてきた。その言葉は六弥に渡した。俺は…今宮の中にいる。俺が好きなアイスを見たら思い出して」
 工藤は私の肩を強く抱き寄せてから、頭をポンポンと撫でた。
 そこから、工藤は一歩下がって、私と離れていく。
「……まだ話さないといけないことがあるのに。どこに行くのよ!? 工藤」
 私は目の前から工藤がどこかに消えていく。追いかけて、工藤の手を掴んだ。
「……また、来るから。もう一度会いに行く」
 工藤は少し後ろを向いて、私に言ってから手を上げてどこかに行った。
「……工藤!!」
 私は彼に叫んだ。彼はいなくなった。周りを見渡しても、どこにもいない。
 私は地面になだれ落ちて、泣き崩した。                    
                *
 今宮が泣いていた。俺が亡くなって、泣いてばかりいる。
「……っ。俺だって…つらいよ」
 俺は今宮の傍から離れて、人間では見えない所で隠れていたのだ。
 空気一枚分の壁が貼られており、その壁を超えるには誰かを守るときに使う時だけだ。
 そしたら、もう俺は空の上に飛び立って、どこかに消える。