君の雨が溶ける

 ここにいる気がした。工藤が言っていた。
 もし小さい頃、会っていたらどうする?と私はその言葉は冗談で言ったのかと思ったが、
今思えば違かった。
 あれは、本当に小さい頃に会っていたんだ。
 私は息切れしながらも、周りを見渡した。それでもいないので、声を出した。
「工藤! ここにいるんでしょ。分かってんだよ!」
 私は大きい声で工藤に叫ぶ。
 叫んでもこないなら、私はどこにいるか分からない彼を見て、呼ぶ。
「呼んでもこないなら、私が話しかけるしかないわね」
 私は彼に問いかける。
「工藤と私が初めて出会ったのは、この公園であってるの? もしかして、その前?
私だけがなにも分からなかったの?」
 私は問いかける。
「それと私のことどう思って見てきたの? 入学した時、どういう気持ちでいたの? 初めて会った時工藤はどんな想いで話したの? ねぇ、工藤! 見てるんでしょ! 出てきてよ!」
 私は一人で問いかけるのはつらくなり、崩れ落ちるように地面に座り込んだ。
「……聞きたくないなら、このままでいいけど…」
 私の後ろから声がすると思い、振り向くと、工藤がいた。
「工藤! どこにいたの」
 目の前には、工藤の姿があった。
「死んでからここにいた。ずっと。だから、今宮の声は聞こえてた」
 相変わらず、無表情で私を見て、工藤は声を発していた。
「なら、なんで出てこないの!」
 私は工藤の腕を掴もうとしたが、すり抜けてしまった。亡くなったんだよね…工藤。
 まだ工藤は現実世界にいるような感覚になっていた。
 目の前に工藤がいながらも、私はすり抜けた手を自分で見て、まばたきをした。
 いないんだ、もう。
「…面白いから」
 彼はクスッと口元に手を添えて、私を見て笑っていたのだ。
「早く出てきてよ。見てないで」
 私は口を膨らませて、工藤に言う。